【令和に聞けない】養護教諭の仕事とは? | ボクの人生、預かり所。

養護教諭の仕事を知ろう

養護教諭の仕事を知ろう 男性養護教諭
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養護教諭は何をしているの?

 養護教諭はどんな仕事をするのでしょうか。保健室を中心に行動することが多く、その様子は教室からあまり見えないですね。そんな養護教諭の仕事内容を項目に分けてご紹介します。

 一部、男性目線で記述している部分や体験の小話もありますので、ご覧ください。

救急処置・救急体制

 みなさんがまず最初に思いつくのは救急処置ではないでしょうか。学校で怪我や病気になった子どもの対応をします。擦り傷の消毒や打撲・捻挫などの冷却、体調不良(検温)時の判断など基本的なものが多いです。しかし、中には症状が重篤なものもあり、即病院に搬送しなければならないケースも、稀ですがあります。その際には、緊急の度合いにより救急車、タクシー、保護者による搬送などの方法を選択します。

 養護教諭としての専門性が求められますし、即判断ができるよう冷静でいることも重要です。あらかじめ救急時の対応を決めておく必要があります。子どもの命を守るために最善を尽くします。

 嘔吐やお漏らしなどの対応もします。吐物や糞尿などの処理もしますし、汚れた衣服の処理(密封)や新しい衣服や下着を貸し出すこともあります。

 関連用品の在庫などの管理もしますし、怪我や病気の処置後の経過など把握する事項はとにかく多いです。

 学校管理下(登下校を含みます)で怪我をして病院を受診した場合は、日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度が利用できます。申請はオンラインで養護教諭が行います。また自治体が独自に類似の制度を設けている場合もあります。

学校環境衛生

 学校の環境や衛生の管理をします。子どもたちの心身の健康や学習能率などに直結するため、一日の3分の1以上を過ごす学校の環境衛生は、大きな意味を持ちます。

 例を挙げると、施設・設備の点検及び衛生状態や環境の確認、飲料水やプールなどの水質検査、机や椅子の高さの適合状況、教室の照度、温度、騒音の点検、換気状況の確認などがあります。

 子どもたちが健康で安全に過ごす環境を維持するため、それぞれに基準が設けられており、定められた頻度(毎日、年1回など)で基準が保たれているかを確認しています。

 換気については、新型コロナウイルスの影響もあり、その重要さを再確認したところですね。

学校保健情報の把握

 子どもたちの心身の健康に関する情報を把握します。子どもたちの状態や配慮事項の把握は重要であり、養護教諭のみならず担任をはじめ組織として共有されるべきものです。

 身体に関するものとして、身長・体重をはじめとした体格、体力、疾病の有無、アレルギーの有無、栄養状態、その他個別に配慮が必要な事項などを把握します。

 心に関するものとして、疾病の有無、不安や悩み、発達状況や性的指向など学校生活を送る上で配慮が必要な事柄などを把握します。

 基本的には「保健調査票」が配られますので、記入して毎年学校に提出する形になります。内容に変更があれば随時、学校に伝えましょう。

 また、担任教諭や養護教諭が行う健康観察において、心身の健康に関する課題や生活における問題などが認められた場合にも、職員間で共有し、保健指導や健康相談などにつなげていきます。

健康診断・健康相談

 健康診断には定期的に実施するものと、行事の前などに臨時で実施されるものとがあります。身体測定や内科検診、歯科検診などみなさんも体験しましたよね。持久走大会の前に特定の子どもに内科検診を実施することなどもあります。

 健康診断を実施する際は、立案、準備、指導、評価などをします。学校医と日程を調整し、日程が決まったら、実施する学年やクラスの順番を決めます。並行して会場の物品配置、人員配置を決めます。会場の設営や教員へ流れを周知するなど、円滑に終えることができるよう配慮の限りを尽くします。

 健康診断当日は、医師の診察結果を健康診断票に書き込んだり、子どもの誘導、注意事項の説明などを行います。男性養護教諭の場合は、内科検診や心電図をはじめ基本的に女子の健診時には入室をしません。保健主事と調整して分担を分けるのがよいです。

 健診後、治療が必要な場合などは、受診を勧める紙を配付します。健診を振り返って改善点がないかを検討し、次回に繋げていきます。特に健診が重なる春頃(2~6月)は、とにかく多忙を極めます。

 心身の健康について、疾病が分かっている子や配慮が必要である子に対しての健康相談は必要です。そして、日常の現れ(行動として認識できる部分)から、背景に何らかの問題が推測される場合も健康相談を行う必要があります。こちらは問題を見過ごしてしまう可能性もあるため、感じ取れるよう養護教諭だけでなく教員は、五感を研ぎ澄ませ職務にあたっています。

 ひとつ例を挙げると、怪我や体重減少、遅刻・欠席が多い、衣服の汚れの背景に虐待やいじめはないか、という観点があります。

 いわゆる問題行動は比較的捉えやすいですし、体重の著しい増減や欠席日数など数字から捉えることも可能です。後は、子どもの雰囲気の変化、髪型や持ち物の変化など視覚や感覚で捉える部分もあります。そのためには普段の子どもたちの様子を把握している必要がありますし、担任などと情報を共有することで変化を捉えることもできます。学校医やスクールカウンセラーとも情報を共有し、対応について助言を求めることも意味があります。

 家庭の事情も様々で、子どもたちを取り巻く環境も複雑化している昨今です。基本業務が多忙な教員にきめ細やかな対応を求めるのは酷ではありますが、子どもと直接関わる現場のみなさんには、そういった視点をもっていていただきたいです。

 ※なお健康相談は後述する保健指導と健康相談活動と内容が重複します。ですが、再掲はしませんのでご了承ください。

 【健康診断こぼれ話】

 尿検査の話ですが、決められた日に持ってきて欲しいのです。提出日じゃないのに持ってくる「フライング尿」は禁止です(笑)。理由なく提出しない「拒否尿」(名称気になる・笑)も禁止!

 一番やめて欲しいのは、尿が入った容器のふたをしっかり閉めない「ゆるゆる尿漏れ」!!(名称気にしないで・笑)クラスの袋の中にひとつあると大惨事。紙袋がボロボロになったり破れたりで、鉛筆書きだと名前が判別できなくなったりすることも。尿が少な過ぎると、検査できなくなってしまいますしね。スポイト式の容器の場合は、キャップで隠れない部分についた尿は拭き取ってから袋に入れてくださいね。

保健指導・保健学習

 保健指導は、個別指導と集団指導に分けられます。個別指導は、心身の健康及び健康生活を送る上で問題を有する子どもに対して実施されます(詳細は健康相談の項参照)。同じような問題が多ければ、保健便りや集団指導で扱ってもよいですね。

 集団指導は、全校集会や学年集会、学級活動、ホームルーム活動などで保健指導を行います。また学校行事に合わせて保健指導を行うこともあります。

 薬学講座や生命の貴重さを学ぶ授業、体のはたらきを学ぶ授業などもそうですし、正しい手洗いうがいや歯磨きの方法を伝えたり、習慣づくように発信したりすることもします。

 外部講師と日程、内容の調整をしたり、会場や道具など計画を立てるのも養護教諭のお仕事です。実施する際には計画を立て、関係教員との共有や周知も行います。

 保健学習は、集団指導と重複しますが、養護教諭が保健の授業に参加、協力し指導を行います。保健体育の教員と協力して授業を進めます。

 養護教諭は成績の評価をしない唯一の教員です。養護教諭が評価をすることには賛否あります。みなさんはどうお考えでしょうか。

 評価をしないことが魅力のひとつだったので、成績の評価には関与したくないです。心身の健康に関する知識は一生役に立ちますし、一生かけて学んでいく側面もありますから、評価とは無関係であって欲しいのです。※個人の感想です

健康相談活動

 健康相談活動は、保健室に来室した子どもの相談に乗ったり、気にかかる子どもを保健室に呼んだりして話を聞きます。必要があれば助言や指導を行います。さらに、教員と子どもたちとの調整、保護者や関係機関との調整などをします。健康相談、保健指導とも内容が重複する部分がありますので、それぞれの項目をご覧ください。

 保健室への相談内容は、「身体の健康に関すること」と「心の健康に関すること」に大別されます。具体的な例を交えて、概要を紹介します。

【身体の健康に関すること】

 小学生では体の発達に関することを質問してくる子もいます。疾病などで運動制限がある子には、周囲の子どもたちに説明したり、担任や教科担任に自分の体調を随時伝えるように声をかけたりします。

 疾病、怪我、アレルギーなど身体の健康に関することで、学校生活における注意点を教えたり、からかいなどの不都合が生じないよう対応したりします。安心安全な学校生活が送れるよう努めます。

【心の健康に関すること】

 学校生活や進路、家庭などの悩み、自身の心のあり方や心の病の話など心に関する相談も多様化しています。養護教諭はカウンセラーのような役割を担います。医療や支援が必要と判断される内容については、保護者や教職員間はもちろん学校医やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、関係機関などと連携し対応する必要があります。

 一般的な事柄ですが、自身や他人の生命や健康に害が及ぶ可能性がある場合以外は他言しないことを私は伝えていました。それ以外の内容でも、本人の了解を得てから他言することを伝えます。これらは守られなければいけない約束です。こうしたことを最初に提示することで、子どもは安心して話をしてくれます。

 保健室登校への対応も行います。自治体の考え方にもよりますが、保健室や別室、フリースクールなど関係機関への登校を出席とみなす学校も増えています。

 そういう学校が増えると、保健室や別室なら登校できる子どもにとって、学校での居場所となります。理解ある養護教諭・教員との関わりや自分の存在を認められること自体が、子どもの心の安心に繋がり、大切にされた記憶として一生残り続けます。

 心の相談は多様化・複雑化しており、養護教諭1人での関わりにも限界があります。ですので、抱え込まずにスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門家と共有、連携しながら対応していくことが重要です。

 ※「健康相談活動」という言葉は、現在でも教職課程の科目にはみられます。一時期、実務必携(養護教諭の必読書的存在)でも解説されていましたが、2020年版ではありませんでした。実態として、健康相談に吸収されたようなイメージです。

学校保健

 学校保健に関係する計画とその実施、運営参画など学校保健に関わるすべてに参与します。具体的には、他の教員が行う保健活動、学校保健委員会などの企画と運営に参加します。

感染症の予防

 感染症で有名なものはインフルエンザです。これ以外にも法律で感染症の種類が規定されており、感染症になると出席停止となります。その期間も法律で感染症の種類ごとに決められており、その期間は学校を休まなければなりません。

 ですが、出席停止は欠席とは異なり、登校しなくてもよい日として扱いますので、出席停止の日数分だけ登校すべき日数から差し引かれます。登校すべき日数が200日で欠席が0日、出席停止が10日だとすると、登校すべき日数が190日で欠席が0日というように記載されます。

 感染症の予防では、保健指導で換気や手洗いうがいの励行を伝えたり、校内を消毒したりします。いかに感染症を防ぐかという視点で対応します。新型コロナウイルス感染症の流行により、アルコール消毒液や空気清浄機を設置したり、マスク着用やソーシャルディスタンスの周知、励行を発信するなど、養護教諭は多忙を極めました。

 ちなみに、「ソーシャルディスタンス」という言葉は日本的な発想の表現で、WHOでは「フィジカルディスタンス」という言葉を使用しています。物理的に距離をとりましょうという意味では、“フィジカル”の方がしっくりきますね。

 新型コロナウイルス感染症に係る出席停止はどのようになっているのでしょうか。文部科学省のガイドラインを要約すると、出席停止のルールは以下の通りです。

 児童生徒本人とその家族のいずれかに発熱などの風邪症状がある場合は出席停止になります。加えて、感染が心配で欠席させる場合も、感染流行地域であり、かつ同居家族に高齢者や基礎疾患をもつ人がいるなど、合理的な理由があれば出席停止として扱うなど柔軟に対応しているようです。

保健室の運営

 学校の方針や教育目標、校訓などを踏まえ、保健室運営の方針や計画を立てます。そして、保健室を利用する時のルールを明確にし、周知します。学校の慣例が存在することもあり、ルールは学校ごとに異なりますし、また養護教諭の考え方によっても若干違ってきます。

 事務作業、備品の管理や健康情報の掲示、保健委員会の顧問、校内備品(石鹸、トイレットペーパーなど)の管理、関連設備の点検・管理など職務内容は多岐に渡ります。

 いかがでしたでしょうか。全部とはいきませんでしたが、養護教諭の職務についてイメージしていただけましたか? 大変な中で頑張っている保健室の先生を大切にしてあげてくださいね。

 養護教諭は、学校内のヘルスリーダーとして発信していく立場ですし、報連相を徹底し、教員や保護者のみならず学校内外と連携をする必要があります。その輪の中で子どもを支援・指導していきます。

 そういった人間関係の調整力が求められる仕事であると私は思います。もちろん確かな知識と子どもへの愛情も欠かせませんね。

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