【事例から考える】放デイにおける分掌の実例と検証 | ボクの人生、預かり所。

放デイにおける分掌の実例と検証

放デイにおける分掌の実例と検証 放課後等デイサービス
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 放課後等デイサービスにおける分掌(仕事を手分けして受け持つこと)について実例から検証と考察をし、適切な分掌のあり方について考えます。

 放デイでの実体験に基づいていますが、すべての事業所に当てはまるものではありません。あくまでひとつの例であることを予めご了承ください。

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放デイの仕事とは

 放デイの仕事内容を大まかに分けると以下の6つです。

①子どもたちへの支援(活動・療育)

②送迎・保護者支援 ③会議関係

④環境整備・活動準備 ⑤情報発信

⑥事務作業 など

 細かい部分は事業所によってさまざまですが、大枠ではこのような仕事を日々繰り返しています。時間のかかる作業もそうでない作業もありますが、限られた時間(この記事では1日8時間とします)の中で何とかやりくりして業務を回しています。たくさんの仕事をみんなで分担し、協力しながら仕事をしています。

 とはいえ、放デイは基本的に少ない人数で業務を回しているので、個人の業務量は多くなりがちです。そういう背景も踏まえつつ、お読みください。

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とある事業所の実際

 まず最初に、1か月の労働時間を計算してみます。とある事業所の場合、約168時間(21日相当)でした。計算式は、{(365-年間休日)×8 }÷12 で算出しました。

 なぜこのような計算をしたかといいますと、自分の正当性を検証したいからです(爆)。物理的に無理なのか、そうでもないのかを確認したいのです。もちろんですが、どうやったら時間短縮になるか、効率化を意識しながら仕事に取り組みました。

 ①子どもたちへの支援(活動・療育)

 子どもがいる時は他の業務は基本的にできません。ですので、同等分の労働時間を消費することになります。

 ②送迎・保護者支援

 平日であれば学校―事業所間、事業所―家庭間の送迎を行います。学校休業日は、家庭―事業所間が2回となります。保護者の方とコミュニケーションをとるのは、どちらかといえば活動の様子などを報告する送りの時が多くなる傾向があります。

 1ヶ月の労働時間から、放デイのメイン業務時間(①、②)を引いてみましょう。残りの時間が、個人の分掌に取り組める時間の目安になります(全部使えるわけではないですが・汗)。

【計算式】(①の業務時間+②の業務時間)×21

 A.1ヶ月がすべて平日の総支援時間:約103時間

 B.平日と学校休業日が半々月の総支援時間:約135時間

 C.1ヶ月がすべて学校休業日の総支援時間:168時間(+21時間⇒休憩なし=189時間)

 Cの場合は、分掌作業はほとんどできません(勤務時間内には)。夏休み(8月)やコロナの一斉休校の時くらいですが、事故なく乗り切るだけでもとにかく大変です。

 基本的にはAやBの月が多いのですが、Bは冬休み(12~1月)と春休み(3~4月)、夏休み(7月)くらいです。なのでAが最も多いパターン(6ヶ月)となります。ここではAとBのパターン(Cは破綻してるので^^;)について検証していきます。

 ここで、残りの労働時間を見てみましょう。Aが残り65時間、Bが残り33時間です。

 続いて③会議関係ですが、これは1月あたり4時間で固定です。記録は私に丸投げで、その時間も含んでいます。

 残りの労働時間は、Aが残り61時間、Bが残り29時間です。

 ④環境整備・活動準備ですが、これも日常業務です。それぞれ分けてみます。

 環境整備には、掃除や洗濯、ごみ捨て、消毒、汚損・破損個所修正、整理整頓、換気、子どもたちが利用しやすい環境作り(視覚表示、教材・玩具の検討など)といったものがあります。

 活動準備には、活動で使用する道具や制作物などの準備、物品や食品の買い出し、社用車の給油や整備、記録の管理、出掛ける場所のリサーチ、配車・送迎の計画、打ち合わせなどがあります。

 いずれも、一例であり細かい内容を挙げるとこの数倍の業務内容となります。

 私が担当していたり、暗黙の了解で投げられてたりするものの作業時間を算出します。詳しい内訳を書いてしまうと特定される可能性がありますので、合計時間だけ表記します。実際に計測した時間を基に算出しています。後述しますが、管理職が実態を一切見ずに「仕事が遅い」と言い張るので、1秒を削り出しにいった記録です(笑)。

 環境整備が13時間で、活動準備が10時間。合計23時間です(私の分掌分。以下同じ。)。

 そうすると、残りの労働時間は、Aが残り38時間、Bが残り6時間です。Bが危なくなってきました。B危うし!

 ⑤情報発信ですが、保護者に渡す手紙類やお便り、ホームページなどで活動の様子などを発信します。これは私の分掌でしたので、時短を頑張った種目です(笑)。というか誰もやろうとしないのですね。何でもやろうと思えばできますし、覚えられます。そうすれば交代制にすることができます。

 ⑤の関連業務はさらにいくつかあるのですが、書くと特定できる内容なので省略しますが、時間には含んでいます。

 情報発信は、合計6時間です。

 残りの労働時間は、Aが残り32時間、Bは残りがなくなりました

 さあでました、⑥事務作業。とにかく最後に相応しい業務量となっております。事務作業は、ほぼ一極集中なのです。誰もやりもしない、というより自分はやれないと思っているのです(やればできます)。「あれお願いします。」→「あれもお願い、これもお願い。」→「あれやっといて、これやっといて。」→【今ここ】※この続きは詳しく解説した記事をご覧ください(最下部にリンクがあります)

 事務作業の量は膨大で、そのほとんどが自分に回ってくるという現実。さて、事務作業ですが、一例を挙げますと、請求業務と関連事務作業、書類作り(これがとにかく多い)、お金関係、活動の日程確保・調整、職場の備品管理などです。例によって詳細を書くと特定できてしまうので、そういったものは省略しますが、時間には含んでいます。

 事務作業は合計12時間です。

 残りの労働時間は、Aが残り20時間です。

 仕事内容の分類は以上ですが、その他としていくつか作業がありますので、そちらもカウントします。

 まずは、対人業務です。これは来客対応や電話対応など仕事に関わる「人」に接する時間です。詳細は書けませんが、過去のデータから頻度と時間を算出し、平均的な時間を求めました。多い日も少ない日もあります。

 対人業務は合計2時間。新人は積極的に対応しないといけません。

 残りの労働時間は、Aが残り18時間です。

 もうひとつは、雑務(分類できない細々した内容という意味)です。これは仕事用のお茶を入れたり、他の分掌の仕事を手伝ったり(依頼されるので)、急遽きゅうきょ他の人を助けるために駆り出されたりすることなどです。

 雑務は合計3時間。新人は何事にも積極的に対応しないといけません。

 残りの労働時間は、Aが残り15時間です。

 最後は、人間がアナログな故に発生するロス(loss)の部分です。これは、物を取ったり探したり戻したり、物事を確認したり、そのために発生する移動時間、排せつ・排便、手洗いなど生理的に必要な時間などの時間も含みます。

 ちなみに休憩時間以外に毎日トイレで小便を2回(男性:午前・午後各1回)した場合、トイレの往復2分、小便+手洗いを1分(手を拭きながら戻る)の合計4分とすると、8×21=168分(2時間48分)となります。週2回大便(1回2分加算)なんかしたら3時間超えますよ。ということで、トイレは3時間として計算します(爆)。

 他のロスは経験則になってしまいますが、1日あたり10~15分くらいだと思いますので、1日12分で計算すると252分(4時間12分)なので4時間とします。

 ロスは合計7時間。新人は何事にも積極的に対応しないといけません。

 残りの労働時間は、Aが残り8時間です。

 ということで、仕事内容にかかる時間は160時間でした。これでお分かりいただけると思いますが、BとCのパターンでは、完全に時間が足りないのです。これがご理解いただきたい1点目。

 この160時間というのは、「1分1秒を削り出せ!」という状況で計測、算出した数字です。ですので、100%またはそれに近いパフォーマンスを160時間続けた場合に8時間余るということを意味します。疲労やストレスなどでパフォーマンスが落ちる場合記事「放デイにおける労働環境とは」参照)やイレギュラーなことがある場合などがありますから、何とか終えることができる(状況によっては終わらないこともある)かなりギリギリの数字とご理解ください。これが2点目。

 まず以上2点をご理解いただきたいと思います。イレギュラーやトラブルなどが比較的少ないAパターンの月でも何とかこなせた感があるほどです。

 これで終わりかと思ったら、そうは問屋(事業所)が卸しません。

 放デイでは、半年に一度『個別支援計画』を作成し、支援の成果や今後のあり方などを評価し、保護者のみなさんひとりひとりに説明します。

 本来は児発管(児童発達支援管理責任者)がする仕事で、児発管自身が作成しなければならないものです。入職して半年程度の児童指導員(放デイ未経験)に、突然「個別支援計画7名お願いします。」と言われましても困ります。

 法律上は、児発管が監修して(チェックして)いれば、他の人が作成しても問題ないようです。ただ、経験させるために作成させるなら、最初は1〜2名位からでよいでしょう。

 しかも、「前の計画を見て自分で考えてね」というスタイルなので、現場の都合優先ですし、人を育てる気が感じられません。

 これに耐えて這い上がると認められるシステムなのかな(皮肉です)とも思いましたが、物理的な時間がない中では、時間内での達成は不可能です。「残業があるのでは?」というご意見の方は、ぜひ詳しく解説した記事をご覧ください(最下部にリンクがあります)

 さぁ、恒例の計測タイム始まるよ(笑)。

 まずは前の計画を見まくります。1名ざっと目を通すのに5分近くかかります。そこからパソコンで入力作業になります。子どもの普段の様子を思い出したり、残っている記録を引っ張り出したりしながら、考えながら入力を完了するまでに評価の場合1時間程度かかります。そして、児発管にお伺いを立てて、直されて返ってくるので、直して返して、また戻ってきてという添削を5往復繰り返します。そのやりとり(直して持って行く)で計30分(6分×5)かかります。合格してもその後10分程度の作業があります。

 ということで、1人105分×7=735分(12時間15分)かかります。

 12時間ですよ。失笑です。

 15年(?)選手の児発管「私(1人の入力)20~30分でできるけど、かかり過ぎじゃない?」

 私「そうなんですね(知らねぇよ)。(初めからそならすごいですね。)」

 初心をお忘れのようです。15倍以上の経験差なんだから、15分の1の7分で終らせられるのではないでしょうか。むしろ初見で入力を2~3倍の遅れに留めたことを評価すべき!(半分冗談です・笑)

 保護者に説明したあとも、その記録を残します。それが1人あたり25分×7=175分(2時間55分)で、添削15分×7=105分(1時間45分)、合格後3分×7=21分。合計5時間1分なので、5時間とします。

 最後に、新しい計画を立てて終わりです。1人あたりの入力に25分、添削が25分、合格後に10分くらいです。ということで、1時間×7で7時間かかります。

 個別支援計画の合計は24時間です。何故非効率な方法を選ぶのかといえば、児発管が楽をしたいからでしょう。まぁ、完全な裏方ではないので、全部自分で作るのが大変なのは理解できなくはないですけどね。

 ということで、個別支援計画がある月は、A・B・Cパターンの全てで破綻します。

 とある事業所では、個別支援計画はAかBのパターン月に実施されます。

最終結果

AパターンBパターンCパターン
① 分掌に使える時間65時間33時間0時間
②(①-分掌57時間)8時間-24時間-57時間
③(②-計画24時間)-16時間-48時間
とある事業所の労働時間と仕事量の関係

 放デイ業界は基本的に人が足りていません。言ってしまえばこれが結論というべき、根本的な問題なのです。

 大変だけど振れる人もいませんし、 個人が抱える仕事(分掌)に使える時間にも限りがあります。あれもこれもやってくれと、処理能力だけではカバーできない量が集まった結果、勤務時間内に終わらなくなります。

 表からも分かるように、B・Cの月は物理的に達成不可能なのです。こういう実態を把握、精査せずに 「仕事が遅い」という評価になるものですから現場は困ってしまうのです。

 「勤務時間後に仕事している=仕事が遅い」という感覚的な評価はやめていただきたい。B・Cの月というだけで、もともと時間が足りてないこともありますし、そもそも私の分掌量が多すぎることもあります。それではさすがに終わりません。

 定時で帰ってるのは、嫌なことはひたすらしない、引き受けない人だけです(それを認める管理職:絶句)。他の方も定時後20~30分で帰ります。私はB・Cパターンの月は日にもよりますが、30分~2時間半(最長でも3時間以内)で帰ります。もちろんAパターンの(個別支援計画なしかつトラブルなどがない)月はどんなに遅くても20分以内に帰っていましたよ。

 Aパターン(個別支援計画あり)・B・Cパターンの月は、勤務時間内に仕事を終わらせるのが困難な状況の中で、事業主が思わぬ行動にでます。放デイというより、事業主の闇を目の当たりにしてしまうのです。続きは下記、「無理難題」が含まれる記事をご覧ください。

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