【日本の現実】男性養護教諭が少ない!その真相 | ボクの人生、預かり所。

なぜ男性養護教諭は少ないのか

なぜ養護教諭は少ないのか 男性養護教諭
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 保健室に男性の先生が少ないのはどうしてなのでしょう。その理由を歴史的背景、社会的・心理的背景から解説します。疑問に思ったことがある人もそうでない人も、これを機会にぜひじっくりと考えてみてください。

 現場で感じたことや持論、一般論を交え、できる限り多角的に分析したいと思います。体験談の部分は、時期は違えどすべて事実です。内容によっては若干表現を変えて(オブラートに包んで)記載していますので、ご了承ください。個人的な考察については、一番最後にまとめています。

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なぜ男性養護教諭がほとんどいないのか

養護教諭の前身が「学校看護婦」であるから

 明治後期に眼病やトラホームなどの衛生処置を行う医療補助者として、当時の呼称であった看護婦が「学校看護婦」という名称で学校に採用されたのが養護教諭の前身です。そのため、呼称からも分かる通り、女性が圧倒的に多かった背景があります。

 しかしながら、当時は教員としては扱われておらず、その待遇は決してよいものではありませんでした。当時の思想であった「男尊女卑」が色濃く現れています。

 当時、男性はいたのでしょうか。気になったのでウィキペディアで調べると、以下のように記述されていました。

1948年(昭和23年)公布の「保健婦助産婦看護婦法」においても、女子について「看護婦」として規定するとともに、男子である看護人については看護婦に関する規定を準用するとされていた(大正4年施行の看護婦規則でも、この点に関しては同様)。昭和43年法律第84号による改正で男子である看護人について「看護士」または「准看護士」と称することが規定された。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』:日本の看護師

日本でもフローレンス・ナイチンゲールの影響を受け継いで、1887年ごろに桜井女学校、東京帝国大学病院、慈恵会医科大学病院、日本赤十字社に看護婦養成所が設立された

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』:日本の看護師

 日本に看護婦養成所が設立されたのが明治20年(1887年)。明治の終わりが明治45年(1912年)です。昭和23年(1948年)には男性が存在していたことが分かります。さらに、大正4年(1915年)の法律でも同様の内容について書かれていたことから、少なくとも日本に看護婦が誕生した28年後には男性が従事していたことが推測できます。

 ちなみに、男性を「看護士」と呼びはじめたのが昭和43年(1968年)。名称が「看護師」に統一されたのは、平成14年(2002年)3月からで、歴史的には看護婦誕生から115年かかっています。長い年月を経て、ようやく男性の看護師は市民権を得た形になりました。

 養護教諭は、学校看護婦と呼ばれていた時代、男尊女卑の思想で女性に対して冷遇していた歴史があります。そして、130年以上たった今、「男性にもさせてください!」ということをしているのです。

 私たちが冷遇したわけではありませんが、過去にあった事実です。国同士でも、人同士でも過去の過ち、特に被害側が納得いかず和解に至らないことがあります。

 養護教諭の歴史においても、これに似たことが起きているのかもしれません。ですが、近年僅かながらも増加をしています。まだまだ時間はかかるかもしれませんが、男性の養護教諭が市民権を得る日が訪れることを心から願っています。

養護教諭養成大学に女子大学あるから

 前述した歴史的背景から、養護教諭の養成大学には女子校が一定数あります。これでは男性が目指そうにもどうしようもありません。

 ですが、養護教諭の教職課程がある学校の全てが女子校ではありません。共学校にも養護教諭の教職課程がありますので、学校を選ばなければ目指す道は存在しています。

 どうしても目指したいという思いがあるのなら、男性でも養護教諭の免許状を取得することは絶対にできます。ですので、この項目は男性が目指すにあたって、大きな影響はないものと考えます。

女性の仕事だという固定観念があるから

 やはり歴史的な背景の影響が大きく、昔は女性の仕事でした。故に女性が圧倒的多数を占めており、養護教諭となった後もその流れが続いているのです。

 子どもの頃の記憶を辿っても、保健室の先生はすべて女性でした。そういう方がほとんどでしょう。ずっと女性が従事しているので、実態から女性がするものだという風に思い込まされてはいないでしょうか。ある種、“刷り込み”にも似た感覚、見慣れたものが正しいんだと無意識に受け入れてしまうことが、長い間続いているのです。

 多くの人が当たり前に思っていることを変革していくには、かなりの時間と労力が必要です。最終的には、個人が持っている『男性』に対するイメージの影響を強く受けますので、万人から受け入れられることはないのでしょうが、毛嫌いされるのかというと、経験的にはそんなことはありません。次の項でも述べますが、ごくごく一部の大人(1~2%程度)から毛嫌いという名の攻撃をされたことはあります。

男性が養護教諭を真剣に目指す環境にないから

 前述の全ての項とも関係しますが、男性の「なりたい」職業に挙がることはまずないでしょう。そもそもなれるかどうかもよく分からない状況が続いています。

 過去の女性不遇時代の影響からか、年代の高い世代からとりわけ厳しい意見を賜ることが多かったです。養護実習(教育実習と同義)の体験談の一部をご紹介します。

 『男性がなるとは何事だ!』

 『養護教諭になる男は、○の腐ったような奴だ!』

 ※個人の感想です という表記をぜひ併記していただきたいのです(笑)。個人の価値観をぶつけられましても困ります。いずれも根拠がよく分からない主張ですし、後者は人格否定、人格攻撃のような言葉です。これを平気で発してしまう本採用教員って何なのだろうと思いました。いずれも発信源は男性です。

 「男性教員 > 女性教員(養護教諭含む) > 男性養護教諭」

 ……図式化するとこうなります。

 2015年頃までの体験談なので旧態依然感が出てますが、2017年の男性採用にかじを切って以降はまた少し違うのかもしれませんね。社会的に認められていない状況では、男性養護教諭が増えるはずがありません。増加傾向を継続させるためにも、よい既成事実をたくさん積み上げていって欲しいです。

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男性養護教諭普及への障壁

男性に対する一般的偏見

 痴漢やセクハラなど性的な犯罪を起こすのはいつも男性…という先入観はありませんか? 性にだらしないのは男性だと感じてはいませんか? 事実、そうした事件を多く起こすのは男性です。しかし、女性が全く起こしていないかというとそうではありません。比率を考えたときに男性の方が多いということがいえるだけなのです。

 その要因は、生物的な構造として男性性が攻撃的・衝動的であるという他に、男性が男性性を受け止めにくいという背景があります。家庭・学校とも男性への性教育がないがしろにされ、男性性を軽んじるような文化(例:男性器はメディアなどで表現・描写される)がある中で、男性はいかにしてアイデンティティを確立していけばよいのでしょうか。

 男性が養護教諭になったら、このような犯罪を起こす危険性が高くなると思われている背景があります。男性であれ女性であれ、起こす人は起こしますし、起こさない人は起こさないのです。個人を見ずして、決断を下すことは偏見以外の何物でもありません。

 公開されている懲戒処分者数(2015年までの10年分)の男女別人数を平均してみた結果、『【男性】180人(98.9%):【女性】2人(1.1%)』でした。180という数字は、全てが性的なものではありませんし、教科関係なく全男性教員が対象となっているものです。

 数字だけみると男性が多いですが、ほとんどの男性はそういう行為をしていません。ちなみに教員は、全国に約90万人います。ですので、教員の約99.98%は真面目に職務を遂行しているのです。

 見方を変えれば、毎年男女計182名程度の教員が何らかの理由で懲戒処分になっているという表現もできますね。単純に計算すると10年で1820名。大手進学塾の東大合格者数じゃないんだから……。数字って面白いですね。

採用者の偏見

 前述した固定観念や偏見、先入観などが採用をする側の方々にある、ということが想定されます。これについては、運動として訴えかけ、ご理解をいただく以外にないと考えております。また、積み上げていった理解を崩すことなく後世に継承していくためには、不祥事なく教育効果を上げていく道しか存在しないことも、私達男性は十分にわきまえておく必要があります。私達男性は、お願いをしていく立場であるということを忘れてはなりません。

 これについては、採用者数が少しずつ増加していることから、貴重な理解を少しずつ積み上げ始めたという風に感じています。男性のみなさまにおかれましては、今後のさらなる増加のため、職務に邁進していただけますよう、よろしくお願い申し上げます。みなさんは言わば、日本の男性養護教諭界の運命を握っているのです。

配置数の問題

 養護教諭は基本的に各校1人ですが、大規模校では複数配置となります。具体的には、児童生徒の数が『小学校 851人以上、中学校・高等学校 801人以上、特別支援学校 61人以上』の学校には、養護教諭を複数配置することになっています。

 理想を言えば、その半分(400人程度)で複数配置にしていただけるとありがたいです。もしそういう流れになれば、男性が配置される可能性を高めるものであると考えます。

 各校1人の配置ですと、男子校を除いて、男性単独配置はやはり社会的に受け入れられるものではありません。ちなみに私は共学校での男性単独配置の経験があります。詳しくは後に投稿する体験談の記事をご覧ください。

 複数配置をした上で男性を採用していただくのが、最も可能性が高い形です。雇用において性別が問題になるのも悲しい話ですが、私は男女一人ずつ配置することが基本になっていけばよいと考えます。

 私個人としては、給与を削減(日本の平均年収弱程度)していただいても構いませんし、一生講師でも構いません。初期の女性の冷遇みたいに扱われたとしても、私にとっては、なりたかった職業のひとつです。

社会的な流れ

SDGs

 SDGs(エスディージーズ:Sustainable Development Goals)とは、「持続可能な開発目標」のことです。2015年9月の国連サミットで採択され、2030年までに達成を目指す世界的な目標です。17のゴールと169のターゲットから構成されています。

 17のゴールの5番目に、「ジェンダー平等を実現しよう」という項目があります。女性のエンパワーメントを求めるものですが、養護教諭においては、男性のエンパワーメントを求めている状況です。このような状況にあるものは少数であるとは思いますが、両方含めてジェンダー平等ですから、性別の区別なく活躍できる社会の実現を強く願います。

 このような動きが世界的規模でみられるのは、男性養護教諭にとっては追い風であり、明るい話題のひとつであることは間違いありません。

男女雇用機会均等法

 雇用に係るすべての過程において、女性労働者への差別の禁止などをうたっており、男女共均等に雇用機会が与えられるよう、昭和47年(1972年)に制定されました。しかし、女性労働者に対する規定(女性差別の禁止)が多くあります。しかし、男性労働者に対する規定(男性差別の禁止)が記載されていなかったことから、平成11年(1999年)に雇用や労働条件などの男女差を設けること自体禁止となりました。実に27年かかっています。

 養護教諭においては、男性の雇用機会の均等を求めており、世の中とは逆の状況であります。ようやくですが、その扉が開かれつつあります。やはり意識の変革には長い時間がかかるものですね。

男女共同参画社会

 男性も女性も互いに人権を尊重し、責任を分かち合い、性別に関係なく個性や能力を発揮することができる社会を目指すべく一連の取り組みが行われています。

※詳しくは内閣府ホームページをご覧ください

 養護教諭においても、こうした方向へ進むべきでなのです。「んー、複数配置ですねぇ~」

職業でみる社会の流れ

 記事「男性養護教諭の現状」でも述べましたが、養護教諭は女性が大多数を占めています。女性が多数を占める職業として、看護師や保育士などがありますが、いずれも男性の進出が社会的に認められ、男性が増えつつあります。養護教諭は社会的に認められるどころか、問題視さえされていないという状況です。

 教員(主に男性)がわいせつな行為・犯罪行為をするたびに、男性養護教諭への道は険しいものになっていきます。

 これから目指される男性のみなさまにおかれましては、男性養護教諭の現状を理解され、決して楽な道ではありませんが、その向こうにあるものを目指して、勉学に励まれることを願います。これからの時代を切り拓いてください。

【関連記事】

 >>男性養護教諭の現状<<

 >>養護教諭を目指す男性の実習体験談<<

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